【人材派遣会社の設立】必要な資格・許可は?起業までをわかりやすく解説

人材派遣会社は認可制となっている業態の中で、比較的設立が難しくないと言われています。本記事では、設立のための資格、認可申請の方法、必要資金などを解説します。

人材派遣業は、特別なノウハウ・設備投資がなくとも起業できるのが魅力です。興味がある方はぜひ参考にしてください。

目次

人材派遣会社設立に必要な資格・許可は2つ

人材派遣会社設立に必要な資格・許可は2つ

人材派遣業とは、自社(派遣元)で雇用した人を、自社以外の会社(派遣先)へ送り、その指揮命令下で派遣先の業務に従事させる事業です。

人材派遣業を営むためには「派遣元責任者」の資格と厚生労働省から「労働者派遣事業」の許可が必要です。

人材派遣会社設立には派遣元責任者資格が必要

人材派遣会社を始めるためには、派遣元責任者の配置が必要となります。派遣元責任者講習を受講し、一定の要件を満たすことで資格が得られます。

派遣元責任者は起業時に最低1人必要

派遣元責任者は、人材派遣に関する法律である労働者派遣法によって、派遣労働者100人ごとに1人以上を選任することが義務付けられています。
派遣元事業主の代表取締役も要件を満たせば派遣元責任者になることができます。

派遣元責任者の職務

派遣元責任者とは、派遣元で派遣労働者の雇用管理を行う担当となる人のことです。必要な書類作成や派遣労働者と派遣先企業の間を取り持ち、両者にトラブルが起きた際に解決に動く役割も持ちます。

派遣元責任者は、具体的には以下のような職務を行います。

・派遣労働者であることの明示等
・就業条件などの明示
・派遣先への通知
・派遣元管理台帳の作成、記載及び保存
・派遣労働者に対する必要な助言及び指導の実施
・派遣労働者から申出を受けた苦情処理
・派遣先との連絡調整
・派遣労働者の個人情報に関すること
・当該派遣労働者についての教育訓練の実施及び職業生活設計に関する相談の機会の確保に関すること
 (ア)段階的かつ体系的な教育訓練の実施に関すること
 (イ)キャリア・コンサルティングの機会の確保に関すること
・安全衛生に関すること(派遣元事業所において労働者の安全衛生を統括管理する者及び派遣先との連絡調整)

参考:日本人材派遣協会ウェブサイト

派遣元責任者になれる要件

派遣元責任者になるには、必要な要件を全て満たす必要があります。
基本的には反社会的でない、公序良俗に反しない、継続性のある事業の運営が可能かどうかを問う内容です。

主な要件は下記の通りです。

  • 未成年者ではないこと
  • 生活の根拠が不安定な者ではないこと
  • 適正な雇用管理に支障のない健康状態であること
  • 一定の雇用管理経験があること
  • 派遣元責任者講習を受講してから3年以内である
  • 派遣元責任者が日帰りで往復できる地域で労働者派遣を行うこと
派遣元責任者に求められる「雇用管理経験」とは?

成年到達後、3年以上の雇用管理経験が必要です。会社での人事・労務の経験や派遣会社での派遣労働者管理の経験、もしくはハローワークや民間職業紹介等での実務経験がそれにあたるとされています。従業員のいる会社社長経験もそれに該当します。
参考:日本人材派遣協会ウェブサイト>よくある質問>講習全般 Q1-6

派遣労働者が派遣元責任者を兼務してもいい?

派遣元責任者は常に業務を行える人である必要があるとされています。そのため、派遣元責任者自身が派遣労働者として働くことはできません。また非常勤の社員・役員、他の会社の社員・役員との兼務も原則としてできません。

派遣元責任者は会社の代表取締役が兼務してもいい?

可能です。代表取締役や監査役以外の役員、常勤の社員は派遣元責任者になることができます。監査役は会社法の規制により派遣元責任者にはなれません。

人材派遣会社には労働者派遣事業の許可が必要

派遣会社を起業して事業を始めるには厚生労働省の認可(労働者派遣事業許可)を取得する必要があります。
許可取得のための要件は大きく5つです。

  1. 資産要件
  2. 組織要件
  3. 事業所に関する要件
  4. 適正な事業運営についての要件
  5. 個人情報の管理要件

それぞれの概要を説明します。

各要件の詳細については厚生労働省のマニュアルをご確認ください。
労働者派遣事業を適正に実施するために-許可・更新等手続マニュアル-

1. 資産要件(基準資産2000万円以上)

資産面では、以下のすべての要件を満たしていることが条件です。

  1. 基準資産額が2,000万円以上ある
  2. 上記資産のうち、1,500万円以上が現金である
  3. 基準資産額が負債の総額の7分の1以上であること

貸借対照表で確認するときは、下記のようにチェックします。
①は「資産総額」−「負債総額」です。基準資産額は資本金ではないことに注意しましょう。
②は「現金」+「預金」の額です。
③は「資産総額」−「負債総額」が「負債総額」の7分の1よりも多いかどうか。

資産が要件の額までたりない場合は、資金調達等により増資するという選択肢があります。

2. 組織要件(派遣元責任者の適切な選任)

派遣元責任者を必要な数配置した組織体制であることや、指揮命令系統が明確になっていることが求められます。

選任される派遣元責任者は前述した要件をクリアし、かつ、労働者派遣法6条の欠格事由に該当しない必要があります。欠格事由には、現在破産者でないことや、過去5年以内に労働基準法等に違反していない、行政処分の対象となっていないこと等があげられています。

3. 事業所要件(事務所が20m²以上など)

事業を行う場所について、下記要件をすべて満たす必要があります。認可の審査時には労働局による現地調査が行われます。

  • 事業に使用する面積が20㎡以上あること(手洗い等は含まない)
  • 風営法で規制されている風俗営業店の密集地域でないこと

4. 適正な事業運営のための要件

派遣事業がその趣旨に沿って正しく持続するための要件です。
主なポイントは下記の3点になります。

  • 労働者派遣事業をそれ以外の手段(会員の獲得、組織の拡大、宣伝等)に利用しないこと
  • 登録時に手数料に相当するものを徴収しないこと
  • 派遣労働者の雇用管理を適正に行う能力を有すること

5. 個人情報の管理についての要件

人材派遣業を営む場合、登録人材のものを含め、たくさんの個人情報を取り扱うことになります。
個人情報を適正に管理し、派遣労働者等の秘密を守るため下記のような必要な措置を取ることが求められています。

  • 「個人情報適正管理規定」を作成、従業員へ教育、遵守すること
  • 個人情報を扱う者の特定、その者への適切な教育を行うこと
  • 派遣労働者から求められた場合に情報の開示または訂正を行うこと
  • 個人情報の取り扱いに関する苦情処理を適切に行う体制を整えること
  • 個人情報の収集は適切な雇用管理を目的とした範囲を超えないこと
派遣元に求められる「派遣労働者の雇用管理を適正に行う能力」とは?

2015年の派遣法改正により、派遣元事業主に派遣労働者のキャリアアップ推進の責務が課されました。その責務の遂行をもって「派遣労働者の雇用管理を適正に行う能力」を判断するもので、具体的には下記が労働派遣事業許可の要件とされたほか、実施状況も行政によりチェックされます。

・派遣社員への段階的・体系的な教育研修の実施
・派遣社員へのキャリアカウンセリングの実施
・派遣元責任者の職務に派遣労働者の教育等の項目を追加

派遣会社が収集してはいけない個人情報とは?

社会的差別につながる恐れのある情報(人種・民族・社会的身分・本籍・出生地など)や思想・信条(支持政党、人生観、愛読書など)。また、身体的特徴、家族の職業、労働組合への加入状況、社会運動への参加有無などは、特別な業務の必要性が存在し、やむを得ない場合以外を除き、収集してはいけない個人情報とされています。

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人材派遣会社設立に必要な事業認可の3ステップ

人材派遣会社設立に必要な事業認可の3ステップ

人材派遣会社の起業に必要な資格、要件を見てきました。次に、厚生労働省の認可取得の流れを3ステップを見ていきましょう。

  • ステップ① 派遣元責任者講習の受講
  • ステップ② 労働者派遣事業許可申請のための書類準備・提出
  • ステップ③ 厚生労働省の認可と事業の開始

ステップ① 派遣元責任者講習の受講

人材派遣会社を設立する場合、まず初めに派遣元責任者講習を受講しましょう。
講習は厚生労働省が指定する講習実施機関受けられます。
お住まいの近くで開催される講習やオンラインの講習を予約して受講しましょう。
一度受講すれば3年間有効で、受講の費用は6000円~9000円程度です。

最短でその日のうちに派遣事業の認可申請に必要な、派遣元責任者講習の受講証明書が発行されます。

参照:厚生労働省|派遣元責任者講習の日程及び講習機関等について

ステップ② 労働者派遣事業許可申請のための書類準備・提出

労働者派遣事業許可に必要な書類を揃え、記入や捺印の上、事業主を管轄する労働局の窓口へ提出します。

労働者派遣事業の許可に際し特別に作成する必要があるのは、下記3種類の申請書・計画書です。

・労働者派遣事業許可申請書(様式第1号)
・労働者派遣事業計画書(様式第3号)
・キャリア形成支援制度に関する計画書(様式第3号-2)

また、上記に添付しなければならない書類が14種類あります(定款・登記簿謄本の写しなど)。その他に参考資料として3種類(自己チェックシートなど)、確認資料として事業所のレイアウト図なども必要です。

詳細は、各労働局のWebサイトを事前に確認してください。

参考:東京労働局>労働者派遣事業関係>許可申請にかかる添付書類一覧 

ステップ③ 厚生労働省の認可と事業の開始

書類が受理されたら、労働局により申請内容の確認・事業所の現地調査が行われます。申請内容が問題ないと判断されれば、続いて厚生労働省での審査に入ります。

おおむね2・3ヶ月で労働者派遣事業の許可または不許可が決定され、通知されます。認可の場合は、認可証の交付があり、これで事業を開始することができます。

人材派遣会社設立は個人事業主でもできる?

必要な要件を全て満たす場合、個人事業主でも労働者派遣事業の認可を得ることは可能です。認可申請をするにあたり必要な書類が若干異なるため、詳細は労働局のWebページ等で確認しましょう。また、法人・個人を問わず、事務所が1つのみで、常時雇用している派遣労働者数が10人以下の場合には「小規模派遣元事業主への配慮措置」があります。資産要件が緩和され、必要とされる基準資産額が1,000万円以上となります。

人材派遣会社の立ち上げはひとりでできる?

できません。最低2名必要とされています。労働者派遣事業の許可を取るためには①派遣元責任者と②職務代行者、③キャリア・コンサルタントを配置する必要があり、①と②は兼任が不可となるためです。「①派遣元責任者兼③キャリア・コンサルタント」で1名、「②職務代行者」の1名、最低この計2名がいれば、派遣会社の立上げは可能です。

人材派遣会社設立にかかる費用の目安

人材派遣会社設立にかかる費用の目安

人材派遣会社を起業する際の費用目安を、株式会社を例として考えてみます。

  • 定款認証関連:10万円前後
  • 株式会社登記関連:15万1千円〜
  • 派遣業認可手続関連:21万円〜

ざっくりと合計すると、最低でも約50万円程度の費用が必要となります。詳細を見ていきましょう。

定款認証にかかる手数料

派遣会社に限らず、起業するときには定款認証に関する費用を公証役場に支払います。

  • 定款認証手数料 5万円
  • 定款謄本作成手数料 2,000円前後
  • 印紙代 4万円

法人登記にかかる費用

法人を設立する際に必ず払う、法務局への登記費用です。

  • 登録免許税 ※資本金の額による
  • 登記簿謄本 600円
  • 印鑑証明書 300円前後

登録免許税は株式会社の場合「資本金 × 0.7 または 150,000円 のどちらか高い額」となるため、資本金2,000万円を例とすると15万円です。

派遣業の認可手続きにかかる諸費用

派遣事業を行うときのみかかるのは、許可してもらう際の費用です。

  • 登録免許税 9万円
  • 許可手数料 12万円~(※事業所の数によって変動)

事業所が1ヶ所の場合の合計額は、21万円となります。

人材派遣会社で法人設立、注意点は?

会社の定款に定める「会社の目的」に注意しましょう。人材派遣会社を設立する際には、正式名称である「労働者派遣事業」を会社の目的として定款に記載する必要があります。

人材派遣会社の設立は簡単と言われるのはなぜ?

大きな設備投資がいらない、在庫を抱えないことから、開始しやすいと言えます。ただし、大手人材派遣会社であっても人材派遣に関する営業利益は1.2%程度で、多くはありません。薄利多売で利益を上げていくビジネスモデルとなります。特に事業開始直後は事業の信頼性がなく、登録人材の集客が課題となるでしょう。

人材派遣業これからのトレンドは専門職と高齢者

人材派遣業これからのトレンドは専門職と高齢者

これから人材派遣会社を設立し、いざビジネスを始めようというときに気になるのは今後の業界の動向ではないでしょうか。

少子高齢化の進む日本では、安定した労働力の確保は社会全体の課題となっています。その中でも、人材派遣での供給に注目されているのが「専門職」と「高齢者」です。その背景について説明します。

人材派遣業のこれまでと現状の課題

日本における人材派遣業は1986年に労働者派遣法ができてから一気に需要が広がり、急成長した分野です。黎明期には事務職から始まり、時代の要請にあわせ派遣可能な職種も増え、今は研究開発や企画の分野でも人材派遣の利用が浸透しました。

人材派遣は現在も堅調な成長が見られる市場ではありますが、社会経済に大きく影響を受ける分野です。変化し続ける労働市場のニーズに合わせたサービスの提供が求められます。

専門職人材は人材不足により採用競争が激化する

様々なビジネスシーンにおけるデジタル化に伴い、今後は事務的な業務がAIに置き換わるとされています。人材のニーズはAIを操る立場となるエンジニアや技術職、人が介する必要のある専門職(社会福祉の専門的職業など)に集中することが予想されます。

これらの職は、市場のニーズに人材の総数が追いついていない側面があると言われ、派遣業界には労働者のキャリアチェンジや教育支援の面でも期待が高まっています。

人材派遣は高年者雇用の受け皿としても期待

少子高齢化による労働力人口減少への対策として、政府は女性と高齢者の雇用安定化施策に乗り出しています。特に高年齢労働者の雇用機会の促進と安定を目的とした「高年齢者雇用安定法」は、2021年4月、全ての企業を対象に以下の努力義務を設置しました。

70歳までの高年齢者の雇用機会確保措置

①70歳までの定年引上げ
②70歳までの継続雇用制度の導入(定年退職を迎えた会社、そのグループ会社、他社、派遣会社)
③定年廃止
④高年齢者の希望に応じ70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤高年齢者の希望に応じ70歳まで継続的に以下のいずれかに従事できる制度の導入
  a.企業が自ら行う社会貢献事業
  b.企業が委託、資金提供等する団体が行う社会貢献事業

参考:厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」

人材派遣業において注目すべきは「②」です。この内容により、例えば企業で65歳を迎える者を他社である派遣会社が継続雇用し、65歳まで勤務していた企業に派遣するという選択が出てきました。

現在、すべての企業で①〜⑤のうちいずれかの措置を取ることが努力義務とされていますが、今後の法改正で「義務」となる可能性もあります。

日本の高齢者は健康寿命が長く、就労意欲が高い傾向にあります。年金受給年齢の引き上げとともに、現役として働きたい労働者側のニーズもあり、今後社会的な需要が高まるのではないでしょうか。

まとめ:人材派遣会社設立は手順を踏めば難しくない!

本記事では、人材派遣会社設立について、厚生労働省の「労働者派遣事業」許可申請の面から説明しました。起業に必要な資格や書類はシンプルで、手順を追って準備すればそれほど難しくはありません。資本金要件や派遣元責任者となる雇用管理経験さえあれば、会社設立は問題ないと言えるでしょう。

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この記事を書いた人

前職でアルバイトの採用を行った時に応募来ないのに広告費用がかかったことに疑問を持ち、応募課金型サービスを提供する京栄コンサルティングに入社。魅力的な求人とお役立ち情報を紹介していきます。

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